D2Cビジネスで覚えておくべき改正後の定型約款

メーカーが消費者と直接取引を行う、D2Cビジネスモデルが今多くのブランドから注目を集めています。

ビジネススタート時からゴールまで、一切の仲介業者を挟まず、すべてを自社内で完結するということが特徴です。

従来まで必要であった仲介業者への手数料が不要になりますので、コスト削減に繋がり、そのコストを削減した分を顧客に対する付加価値として還元することができます。

近年、IT化により消費者の生活にECサイトが溶け込んでいるからこそ、参入企業が急増しており、今後もさらに市場が拡大することが予想されています。

D2Cビジネスをはじめ、ECビジネスを行う際には、まずビジネスに関連する法規を遵守しなければなりません。

消費者契約法に関する知識をしっかり得ていなければ、万が一の際にはビジネスをスムーズに進めることができなくなり、思わぬところで躓いてしまう場合があります。

そこで今回は、D2Cビジネスで覚えておくべき改正後の定型約款について、詳しくお話させていただきたいと思います。

今後D2Cビジネスを展開したいと思われている方は、ぜひこの記事を最後までお読みになって、今後の参考になさってくださいね。

なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。

定型約款

民法の中で、契約に関する基本的な規律を定めた部分を債権法と言い、明治29年の制定以来、根本的な改正はなかったのですが、時代の変化に合わせ、内容が見直され、今では一般市民でもわかりやすく改正されています。

改正内容は非常に多くあるのですが、特に定型約款に関する規律には注目したいところでしょう。

Webサービスにおいては、今では利用規約が当たり前になっているのですが、従来までは民法に該当する規定がなく、明文のルールがなかったので、改正後に初めて法律的に整理されたのです。

定型約款という言葉にあまり馴染みを感じることがないかもしれませんが、簡単に言うと、不特定多数の相手に対し、同様の内容で提示する契約条件のことを言います。

Eコマースでは、特定商取引法の表示ではなく、利用規約を定めていることがあり、これは会員登録の際に定時する会員規約も定型約款に当たります。

この場合、規約を作る側であるショップが定型約款の準備者となるのが、規律の対象です。

定型約款の表示と同意取得の必要性

利用規約が定型約款に当たる場合、従来までの運用と何かを変えなければならないのでしょうか。

新民法に関しては、定型約款を契約内容とすることに合意があった場合、躍起の個別の条項にも同意したとみなす、と定められたため、「規約に同意する」というボタンが必須になりました。

条文では、別途では請求があった場合、開示する義務があるのですが、定型約款の内容を事前に表示することも必須ではないとされています。

これは現実的に定型約款の全文を表示することが難しいことがあることが考慮されたのでしょう。

ですが、Web上の取引では規約本文へのリンクを常に見えるところに置き、消費者がいつでも内容を確認することができる状態にした上で、必要に応じて同意ボタンを押してもらう、という流れが通常になっており、最良だったことでしょう。

ですが、規約までの同意のプロセスをいれていない場合に関しては、定型約款の契約内容とすることについて合意があった、と言えるよう、表示の仕方工夫が必要ですので、弁護士さんなどへの相談も必要になってくるでしょう。

不当条項

規約の内容をしっかり表示し、同意ボタンが押されていたとしても、個別の条項への合意は認められないという、不当条項の場合があります。

不当条項は、相手方の権利を制限したり、相手方の義務を加重する条項であり、信義則に反して相手方の利益を一方的に善する条項は、合意がなかったもの、とされています。

たとえばEコマース上で、不良品でも返品や交換はしない、お試し商品を注文したら自動的に定期コース契約になる、などの条項があれば、これに関しては契約条項として有効ではない、と判断される可能性があるのです。

定型約款により、消費者は事前にその内容を詳細まで確認することはありませんが、それでも不当な内容が含まれていないという「信頼」が前提にあるからこそ、個別の条項に同意があったとみなされるのです。

規約内に潜り込ませるのではなく、別の形でしっかり説明した上で、明示的な同意をもらわなければ、無効と判断されてしまいます。

まとめ

以上、D2Cビジネスで覚えておくべき改正後の定型約款についてお話させていただきました。

D2Cビジネスを行う上では、このようなEC上での法律をしっかり理解しておかなければ、知らず知らずのうちに、思いもよらないリスクを負ってしまう可能性があります。

正しく深く法律を理解することこそ、D2Cビジネスで生き残るための重要なポイントなのです。

改正後の定型約款は、D2Cビジネスにおいても非常に重要な知識のひとつですので、ぜひこの機会に覚えてくださいね。