近年D2Cと言うビジネスモデルが高い注目を集め、あらゆる業界が関心を示しています。
その中でも、特に関心が集まっているのがアパレル業界です。
アパレル業界はEC化が遅れている業界として知られていましたが、現在急速にデジタル化が進んでいます。
このデジタル化に伴い、デジタルを活用するD2Cが注目されているのです。
しかし、アパレル業界では現在独自にEC化が進んでおり、大手のブランドもECに注力しています。
そのような状況においてもD2Cに関心が集まるのは、従来のビジネスのままのECでは、D2Cブランドにかなわないと考えられているからなのです。
そこで今回の記事では、大手アパレルブランドがアパレルD2Cにかなわない理由について説明したいと思います。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
D2Cとは、商品の企画、生産から販売に至るまでのすべての工程を自社で内製し、自社ECで消費者に直接販売する仕組みのビジネスモデルです。
このD2Cは、ここ数年の間に急速に成長し、現在では最も注目されているビジネスモデルとなっています。
このD2Cは、あらゆる業界から注目されていますが、特に関心が高いのがアパレル業界であり、多くのアパレルD2Cブランドが誕生しています。
しかし、アパレル業界には、以前から消費者に直接商品を販売するSPAと言う直販モデルが存在しており、このSPA型は、D2Cと似たような仕組みです。
それにもかかわらずD2Cがアパレル業界においてこれほど注目されているのは、SPA型とD2Cには大きな違いがあるからです。
その違いと言うのが商品の販売方法なのです。
前述のように、D2Cは自社ECで販売をする仕組みであり、基本的に実店舗での販売は行いません。
一方、SPA型モデルは、ECでの販売も行いますが、基本的には、実店舗での販売を主としているのです。
D2Cには、その他の面においても、SPA型や従来のブランドビジネスとは異なる面が多々あります。
その一つが、取り扱う商品の数が少ないということです。
D2Cは、商品の企画段階で選び抜いた少数のこだわりの商品からブランドをスタートさせるのです。
一方、ファストファッションなどに代表されるSPA型は、大量のアイテムを大量に生産することで知られています。
しかし、現在SPA型のような大量生産された商品は、以前程売れなくなってきているのです。
その背景には、大量生産された似たような商品に消費者が関心を示さなくなったことがあります。
多くの消費者が、自身が本当に気に入った商品だけを購入したいと思うようになっており、ニーズが多様化してきているのです。
この消費者の多様化したニーズに対応するために、求められたのがD2Cと言うビジネスモデルなのです。
そして、D2Cが他のビジネスとは異なる最大の特徴ともいえるのが、ブランドの世界観やストーリーでのブランディングを最も重要と考えていることです。
D2Cは誕生したばかりのビジネスであり、D2Cブランドには歴史はありません。
高級ブランドのように、有名なデザイナーを擁している訳でもないため、ブランドを確立するためには、世界観やストーリーを訴求する必要があるのです。
そして、このブランドの世界観やストーリーと言うのは、じっくり時間をかけて伝えていくものです。
それには実店舗よりもデジタルのほうが都合が良く、デジタルを主戦場とするD2Cと非常に相性が良いのです。
実店舗で実際に世界観を体験することも重要ですが、それよりもまず必要なのは、自社ECなどのデジタルを最大限に活用し、自宅でゆっくりと世界観やストーリーに浸ってもらい、ブランドを深く理解してもらうことなのです。
以上のように、D2Cには今までのビジネスにはない特徴があり、それが自社ECを中心としたデジタルの活用による徹底したブランディングなのです。
しかし、アパレル業界全体もEC化が加速し、大手のアパレル企業はこぞってECサイトを運営しています。
今だ実店舗での販売が主となってはいますが、ECに重きを置くアパレルが増えてきているのです。
また、マーケティングにおいて、SNSを活用していないアパレルブランドはほとんどありません。
従来のブランドも、D2Cと同様に自社ECを運営し、SNSを活用しているのです。
それにもかかわらず、アパレル業界においてD2Cが注目されるのは、EC化を加速させる既存のアパレルブランドとD2Cが似ても似つかないビジネスであると分かっているからです。
D2Cと似ているように見えるのは、ECとSNSを利用しているという点だけであり、既存のアパレルブランドは、ECとSNSをD2Cのように活かしきれてはいないのです。
既存ブランドのECの中には、おしゃれなサイトも存在します。
しかし、それは表面的なものにすぎません。
これまでのビジネスのまま、おしゃれなECを立ち上げただけであり、仕組みは全く変わっていないのです。
D2Cは、ブランドを立ち上げ、商品を企画する段階から、ブランドの世界観を追求し、自社ECを構築しているのです。
EC自体が商品を売るだけのものではなく、ブランドの世界観やストーリーを体験してもらう場所という前提で作られています。
一方既存のブランドのECは、あくまでも商品を売る一つの場所でしかないのです。
この状況では、いくらデジタル化を加速させても、D2Cにかなうわけはありません。
実店舗で売れなくなっているからと言って、EC化をすれば売れるわけではないのです。
デジタルと言うD2Cの主戦場で戦うためには、安易にEC化を行うのではなく、ビジネスの根本から大々的な改革する必要があります。
それができないのであれば、今後も既存のブランドがD2Cに追いつくことはできないのです。
アパレル業界は、随分前から危険な状態にあると言われてきました。
似たような商品ばかりが増え、市場は飽和状態となり、消費者は商品を買わなくなってしまったのです。
消費者のニーズに大きな変化が起こっているのですから、従来と変わらないビジネスを行っても通用するわけはありません。
ニーズが変わっているのであれば、それに対応することが必要なのです。
そして、この変化するニーズに対応するために登場したのがD2Cであり、デジタル化が進む世の中の流れにうまく乗ることで、成長を続けているのです。
既存のブランドがD2Cに追いつくためには、これまでのビジネスを大きく変化させることが必要なのです。