2009年に消費者庁が設立されましたが、この背景には消費者の健康への被害や生活に多大な影響を及ぼす多くの事故・事件があり、これらの多くは市場原理や効率性を重視し過ぎた規制緩和と利益最優先による企業モラルの欠如が原因とされています。
そのため、製品安全問題や広告表示問題に対するマスコミや消費者の関心は近年高まりつつあります。
このような問題について、単品リピート通販業界の一つの特性である「直接責任能力(ダイレクトレスポンシビリティ)」が注目されています。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
刑事裁判などでよく耳にする「責任能力」とは異なり、直接責任能力(ダイレクトレスポンシビリティ)とは、単品リピート通販において欠陥商品などのトラブルが発生した場合、購入者情報を保有している単品リピート通販会社は購入者に対して直接連絡・通知をしたり、対応する責任を負っていることです。
欠陥商品に限らず、返品に関する手続きも日々行なっている会社にもこのような直接責任能力は発生します。
近年インターネット上の誇大広告が社会問題になりつつありますが、このような広告の不当表示についても通販企業は直接責任能力を問われ、その責任から逃れることはできません。
ダイレクトマーケティングにおいて、「無店舗性(実店舗ではなくネット上のみで販売すること)」と「無対面性(顧客と直接対面せず商品を売ること)」はインターネットが普及した現在大きな利点になりましたが、これらの利点は事業者と消費者との間でコミュニケーションが不足する原因にもなります。
このようなダイレクトマーケティングの特性(無店舗性と無対面性)を悪用する事業者も現れており、悪質な事業者により長期間発生した消費者問題が単品リピート通販業界の発展を阻害してきた一面もあります。
日本通信販売協会など多くの業界団体が一丸となってコンプライアンスに取り組んでいますが、単品リピート通販業界の信頼を高めるには、特定取引商法など関連法律の順守マニュアルを更に強化・徹底する必要があります。
具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。
現在も続くコンプライアンスの取り組みですが、ここで通販業界における戦後のコンプライアンスの歴史を振り返ってみましょう。
・1960年代: 通販における消費者問題の発生
大量生産・大量流通の時代になったことにより、消費者権利の意識が高まった結果、1968年に消費者保護基本法(現消費者基本法)が制定されました。
・1970年代: 訪問販売法の制定で規制対象になる
訪問販売によるトラブルなどの消費者問題が多発した結果、1976年に通販は訪問販売法(現特定商取引法)において特殊販売として法的規制を多く受けることになります。
・1980年代: 訪問販売法改正により役務取引も規制される
サービス経済化が進んだ一方、新サービス分野での消費者問題が多発した結果、訪問販売法改正により役務取引が規制対象になりました。
経済社会が高度化、成熟化すると、第三次産業の分野が拡大することはよく知られていますが、サービス経済化もその延長線上にあります。
最初は卸・小売業、金融・保険業、運輸・通信業、飲食業という伝統的なサービス産業が、生産額のシェアを高め就業者を拡大し、続いて教育、医療、家事、公共レジャー、情報などの分野で、新しいサービス産業が誕生していきます。
「役務(えきむ)」とは聞き慣れない言葉ですが、役務としてカテゴライズされるものは銀行やレストラン、運送業など、サービス業で取り扱う、「サービス」です。具体的には他人のために行う労務や便益というものをさします。
病院や学校といった、いわゆる非営利事業と呼ばれているものでも役務に入ります。
・1990年代: 顧客関係維持志向と継続的役務提供
顧客との良好で長期的関係維持を目指す考え方の普及とともに、継続的役務提供に関する規制などが、訪問販売法改正に盛り込まれます。
・2000年代: インターネットの急激な普及とダイレクトメール規制
インターネットでの取引が急増したため、個人情報の適切な利用を促進する個人情報保護法が2005年に全面施工されました。
訪問販売法は特定商取引法と改名され、通販では指定商品・役務制度の撤廃や返品特約、電子メール広告(ダイレクトメール)規制などが盛り込まれました。