今や7兆円を超える市場規模にまで成長した通販という小売形態が日本で誕生したのは、訪問販売の誕生からしばらく経ってからのことです。
今回と次回の記事では、単品リピート通販がどのような社会的背景のもと誕生し、どのような過程で現在に到るまで発展したのかお話したいと思います。
鉄道や郵便制度などのインフラが整理された1876年(明治9年)に、現在の津田塾大学創立者の津田梅子の父で、農業学者の津田仙が、「農業雑誌」という雑誌上で始めた種子の販売が日本で初めての通販と言われています。
その後、大正時代に入って百貨店の通販が登場しますが、産業としての本格的な成長は第2時世界大戦後の1950年代から始まります。(日本の高度成長期の始まりと時期が重なっている点に注目してください。)
具体的な説明に入る前に、まず大まかな通販作業の成長モデルから始めましょう。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
・成長期(1970年代〜1990年代)
・成熟期(1990年代〜2000年代)
・再生期(2000年代〜現在)
1980年代から通販の歴史は始まりますが、まだこの段階では日本は明治維新直後で経済自体がまだ未成熟で安定していません。
この後西洋化やインフラ整備などが行われ、いわゆる「近代化」が始まり、戦争の時代へと突入していきます。戦争が終わり、高度経済成長により1970年代に日本経済が安定するまでを、通販の成長モデルにおける「幼児期」と呼びます。
戦前から始まっていた高島屋や三越などの百貨店の通販、主婦の友社の通販部門の再開、などと同時に1952年には既にアメリカから「リーダーズ・ダイジェスト社」という通販業者が国内市場に参入しています。
1965年にはハイセンス(現フェリシモ)、1970年には日本捺衣(現ニッセン)などの有名な通販会社も続々と通販市場に参入しました。
このように次々と新しい会社が通販市場に参入する過程で、消費者の通販に対する不安(ネガティブな印象)が徐々になくなっていき、一部では「通販マニア」と呼ばれる好事家も出現しました。
この「不安」が徐々に解消された背景には、カタログの充実、商品返品保証制度の普及、配達サービスの拡大・充実などの企業による努力があります。
では、このように通販業界が発展するために必要な条件とは何なのでしょうか?段階別に理解していきましょう。
通販が発展する段階の条件には、「企業側の条件」と「消費者側の条件」の2種類があります。それぞれの段階にはどのような条件があるのか、時代背景を想像しながら読み進めてみてください。
・カタログの充実。
・商品返品保証制度の普及
・通販愛好家の出現(一部の熱狂的なファンの獲得)
成長期の条件は、消費者にとって通販がより便利になり、割安になる一方、企業は技術の発展により高度な分析、販売活動などが行えるようになって点が特徴的といえるでしょう。
・販売網の確立(より多くの人に届けることができるように坂路を拡大する。)
・マーチャンダイジングの確立
*マーチャンダイジング(Merchandising/MD)とは、流通業に特化したマーケティング用語で、自社の商品やサービスを消費者に販売するにあたり、その販売方法や価格設定を戦略的に設定するための活動や計画、管理のことです。単に、商品計画・商品化計画といわれることもあります。
・割安感。
・低価格志向
・通販推奨者の出現
・顧客データベースの普及
成長期かた成熟期に入ると、消費者は商品自体の満足度に関心を持ちます。つまり、商品の満足度というお客様のリピート率を上げるためには避けて通れない部分が条件になってきます。
この時期は1990年代から2000年代なので、少子高齢化社会など現在と同じような問題が日本で既に発生している点に注目してください。
・物流体制の確立
・自動決済制度の確立(クレジットカード決済など)
・ホームショッピングの定着
・大量一括購入
・通販の日常化
・高齢者市場の出現
・対面販売との併用
再生期については前回の記事でより詳しく説明しているので、もしよければ読んでみてください。
【前回記事】単品リピート通販の売上高が20年近く増加し続けている理由とは?
・マルチチャネル戦略
・関係性マーケティング
・コンビニとの連携
・団塊世代市場の出現
・インターネットの普及
・モバイルネットの普及