アパレル業界は、近年、業績の低迷が続いていましたが、現在の新型コロナウイルスの流行によって、より一層厳しい状況へと追い込まれています。
そして、そのアパレル業界をさらに追いつめるのではないかと危惧されているのが、環境省が推進するサスティナブルな取り組みです。
そして、そんなアパレル業界に必要とされているのがD2Cなのです。
そこで今回の記事では、これからのアパレルにD2Cが必要な理由について説明したいと思います。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
サスティナブルは、持続可能なと言う意味を持つ言葉で、地球の環境が破壊されている現状において、それを保護する活動や、自然環境に配慮した事業などを表現する際に用いられています。
近年、世界的にこのサスティナブルへの関心が高まっており、日本でも国を挙げてこのサスティナブルな取り組みを推進していくと表明しています。
また、世界の多くの企業が何らかの形で取り組みを行っており、特にD2Cブランドはそのほとんどがこの取り組みに注力しているいるのです。
日本のアパレル業界でも、この取り組みを行う企業が増えており、これを機会に新たなビジネスを展開しようと試みている企業も出ていたのです。
しかし、その流れに水を差したのが、環境省が発表したサスティナブルファッションと言うレポートなのです。
このレポートの内容は、ファッションに持続可能を求めるものであり、世界的な流れに反した内容と言うわけではありません。
現在のアパレル業界の現状が、いかに環境に負担をかけているかを問いかけ、企業として何らかのアクションを起こすべきであると提言しているのです。
具体的には、服を簡単に買い替えるのではなく、長く大切に着ることを求め、1着1着丁寧な服作り、またリペアすることで新たな価値を見出すことが求められています。
また、洋服のシェアやセカンドハンドなどによる、リユースの推進も求められています。
つまり、消費者に安易に服を買わないこと、服を捨てないこと、品質の良い服を購入し、シェアやリペア、リユースなどで長く愛用することを求め、企業には、適正な品質の商品を、適正な価格で、適正な数量で販売すること、シェアやリペア、リユースを推進していくこと求めているのです。
これは、サスティナブルの概念から言えば適切なことであり、何も問題はないように見受けられます。
しかし、服を売ることで成り立つアパレル業界からすると、非常に厳しい内容と受け止められているのです。
アパレル業界の扱う商材は、そもそも大きく3種類に分けることが可能でした。
1つ目がファスト商品と呼ばれる商材で、これは消費材とも呼ばれ、ワンシーズンで使い捨てられるような耐久性のない商品を指しています。
2つ目がランニング商品と呼ばれる商材で、これは多年生消費財と呼ばれ、何シーズンか使用することが可能な耐久性のある商品を指しています。
3つ目がインベスティメント商品と呼ばれる商材で、これは耐久消費財とも呼ばれる耐久性に優れた商品を指しています。
しかし、近年ではこの商材の分類は曖昧なものになっています。
ファスト商品が大幅に増え、ランニング商品とファスト商品の境が無くなってきているのです。
これは、SPA型と呼ばれるビジネスモデルがアパレル業界を席巻し、多くの企業が、SPA商品を扱うようになったことが大きな理由と言えます。
このSPA型は、トレンドの商品を大量に生産し、大量に流通させるビジネスモデルであり、そのほとんどが耐久性のないトレンド商品なのです。
そして、このSPA型の波に押される形で、価格は比較的高いけれども耐久性があり、何シーズンも着用することができる良質なブランド商品である、インベスティメント商品の価値が低下したのです。
環境省のレポートがアパレル業界にとって厳しいものと考えられているのは、アパレル業界が上記のような状況にあったからなのです。
ここ数年は、消費者のニーズが大きく変化していることもあり、SPA型の勢いは一時よりも衰えていました。その中で、D2Cと言う新たなビジネスモデルも誕生し、アパレル業界も大きく変わるのではないかと思われていたのです。
しかし、一度低下した従来のインベスティメント商品の価値はさほど変わることはなかったのです。
このような状況の中で、国がアパレル業界に突き付けたのは、安い服を過剰に作らず、良質な服を適切に販売しなさいと言うこと、つまりファスト商品ではなくインベスティメント商品を作りなさいと言うことです。
そして、これは消費者に対して、こだわって作られた良質な商品を長く愛用しなさいと諫言しているとも言えます。
これは、消費者側から見ればもっともな話であり、何ら問題はありません。
消費者の多くは、毎シーズン大量に販売されるトレンド商品に辟易しており、既に、安いモノを大量に買うのではなく、本当に必要なモノを適切な価格で買うと言う考えにシフトしているのです。
ここ数年で急速に成長したD2Cビジネスは、この消費者の変化に上手く合致しています。
しかし、アパレル業界はいまだ、従来の体制から抜け切れず、国からの通達にショックを受けているのです。
このようなレポートの内容が求められるであろうことは、世界の流れを見ていれば、早くから分かっていたはずのことです。
サスティナブルに関心が高まっているのは、今に始まったことではありませんし、既に海外のD2Cブランドの多くは数年前から取り組みを行っているのです。
そもそもアパレル業界は、何年も前から低迷しており、ビジネスモデルの見直しを考えるべきと言われてきたはずなのです。
ファスト商品でさえ売れなくなってきているのですから、新たなマーケットを探し、ビジネスを変えるべきなのです。
サスティナブルを求められているのであれば、ファスト商品ではなく、インベスティメント商品に注力すればよいのです。
実際に、国内のアパレルD2Cでは、良質な商品を適正な価格で販売し、消費者の支持を得ていますし、多くのD2Cがサスティナブルな取り組みを実行しています。
さらに、そのD2Cの躍進に伴い、シェアやリペア、リユース、リサイクルと言った新たなマーケットも広がっているのです。
現在の世界の流れや消費者のニーズの変化を考えれば、従来のアパレル業界のビジネスは通用しなくなっているのは明らかです。
サスティナブルが求められていることは、既に分かっていたことであり、それに対応しようとしてない企業のほうが問題があると言わざるを得ません。
アパレル業界の中でも、世界情勢に対応し、すばやくD2Cにビジネスモデルを転換している企業も存在しています。
D2Cは、従来のアパレル業界の悪しき慣習を一掃できるビジネスモデルであり、これからの時代を担うビジネスなのです。