近年、通信販売業界において、D2Cと言う言葉をよく耳にします。
このD2Cは、一般的には、消費者に商品を直接的に販売する仕組みのビジネスモデルのことを指しています。
しかし、これだけでは、従来の通信販売とどこが違うのかが良く分からないと言う方も多いようです。
そこで今回の記事では、D2Cと通信販売の違いについて説明したいと思います。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
D2Cは、Direct to consumerの略称で、企業が自社で生産した商品を、自社ECにおいて消費者に直接販売するビジネスモデルです。
このような販売形態は、以前から行われているように思われがちですが、従来の通信販売とは、大きな違いがあります。
従来から行われているのは、いわゆるメーカー直販型と呼ばれるビジネスモデルであり、自社ECだけでなく、実店舗での販売も行っており、デジタルだけで完結しているわけではありません。
一方で、D2Cは、商品の開発、生産から、販売に至るまで全てがデジタルで完結するビジネスモデルなのです。
しかし、中には、D2Cと同様に、全てをデジタルで完結している通信販売も存在していますが、それらの通信販売もこのD2Cとは異なるのです。
この両者が異なる点は、ビジネスの仕組みではなく、ビジネスにおいて何に重きを置いているかということです。
従来の通信販売は、商品の性能や品質、価格などに重きを置き、効率よく商品を販売することを目的としています。
つまり、良い商品を、手軽に、手ごろな価格で販売することが何よりも優先されるのです。
一方で、D2Cは商品そのものはもちろんのこと、その商品やブランドをリンクさせた世界観に重きをおいているのです。
D2Cでは、新商品を企画する段階から、世界観を含めたコンセプトを練り、自社ECにおいてもその世界観をユーザーに強く打ち出します。
また、マーケティングにおいても、その手法は従来とは大きく異なります。
従来のように、リスティング広告やSEOなどで顧客を獲得するのではなく、D2Cでは、InstaglamなどのSNSを活用し、ブランディングや顧客のファン化に注力しているのです。
具体的な例を挙げると、D2Cの元祖と言われる、WarbyParkerは、InstaglamやFacebookなどのSNSに合わせて130万人以上ものフォロワーを抱えています。
そして、それらフォロワーの口コミにより新規顧客の半分以上を獲得しており、既存顧客の60%はSNSで獲得した顧客なのです。
このマーケティング手法は、SNSを主としているため、コストが従来の手法よりもかかっていません。
それにもかかわらず、次々と顧客を獲得し、さらには熱狂的なファンまで作り出しているのです。
従来の通信販売においても、SNSを活用したブランディングや顧客へのアプローチは行われていますが、効率よく販売するために、リスティング広告、アフェリエイトなどの活用も併せて行われています。
そのためいくら、SNSを活用したブランディングによりブランドの価値を高めることができたとしても、リスティング広告、アフェリエイトなどの施策により、ブランドの安売り感は否めなくなっているのです。
しかし、SNSをマーケティングの軸とするD2Cにおいては、そういった問題が生じることはありません。
ブランドの世界観を大切にしながら、商品の企画段階から一貫性を持たせたブランド展開をすることができるため、ブランド力を最大限に高めることが可能であり、それがユーザーの獲得に繋がっているのです。
また、従来の通信販売では、効率的なマーケティングによって得られた収益は、再度効率的なマーケティングに投資されます。
一方D2Cでは、マーケティング施策ではなく、商品の開発や改善、商品原価、販売のための設備投資などに再投資されるのです。
実際に、D2Cで成功している企業は、ほとんどが利益の大半をこのような用途に投下しています。
そして、それは結果として、顧客満足度を向上させ、ブランド力を高めることに繋がり、マーケティングにかける費用を下げ、最終的に利益に繋がることになるのです。
つまり、D2Cは、ブランド力を高め、ブランドを確立することで得ることができた利益は、さらにブランドを確立することに利用することができるのです。
このように、マーケティングにおいても、D2Cと従来の通信販売では大きな違いがあるのです。
従来の通信販売では、とにかく商品を販売し、効率よく利益を得ることが求められます。
商品をできる限り多く販売するために、広告運用などのマーケティング施策を実施し、顧客を獲得し続けていかなくてはならないのです。
それには、その商品やブランドがどのようなコンセプトで生み出されているのかと言ったことは二の次とするしかないのです。
一方D2Cでは、商品やブランドを大事に育てていくことが利益に繋がっていきます。
そして、その利益がさらにブランドの価値を高め、顧客をファン化することを可能とし、結果的に利益へと繋がると言う好循環を生み出すことができるのです。