どのようなサービスであっても、利用していた顧客が、何らかの理由から利用しなくなると言うことは起こります。
その顧客は、休眠顧客と呼ばれ、従来のビジネスでは、この顧客に対するアプローチが重要とされていました。
しかし、定額制を特徴とするサブスクリプションにおいては、この休眠顧客は放置するのが常識となっているようです。
そこで今回の記事では、サブスクリプションにおける休眠顧客について説明したいと思います。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
休眠顧客は、従来のビジネスでは、過去に取引があったけれど、何らかの理由により長い期間利用のない顧客のことを指します。
この顧客は、過去に利用歴があるわけですから、新規の顧客に比べ成果に繋がる可能性が高い見込み顧客であるため、一般的には、新規顧客よりも、休眠顧客にアプローチしたほうが効果的であるとされています。
また、休眠顧客は、その状態が長いほど離反する可能性が高くなると言われています。
そのため、顧客の休眠状態に気が付いた時点で、早期に対応することが求められます。
この休眠顧客は、どのような業種であっても必ず存在し、それはサブスクリプションであっても同様です。
しかし、サブスクリプションにおいては、休眠顧客は起こすべきではないと考えられています。
その理由は、サブスクリプションの特徴である、定額制のシステムにあります。
サブスクリプションは、毎月定められた金額を支払うことで、商品やサービスを利用できる権利を得ることができる仕組みです。
この毎月の支払いのほとんどはクレジットカード払いであるため、顧客側からアクションがない限り自動的に支払われます。
そのため、顧客が商品やサービスを利用していなくても、企業側にとっては問題はないのです。
それどころか、企業側にしてみれば、商品やサービスを利用せず、料金だけを支払ってくれる休眠顧客は有難い存在とも言えます。
利用していないのですから、企業側に商品やサービスの改善など何かを求めてくることもないのです。
顧客がこのような休眠状態に入ってしまう理由は、顧客それぞれに異なります。
利用できていないことは認識していても解約処理が面倒と言う場合もありますし、複数のサービスを利用しているため、その状態に気付いていないと言う場合も考えられます。
しかし、どのような理由であっても、サービスを長い期間利用していないのですから、顧客がそのサービスを必要としていないと言うのは明らかです。
そのため、企業側からアプローチを行えば、それがきっかけとなって解約に繋がってしまう可能性が非常に高いのです。
このような理由から、多くのサブスクリプションサービスでは、休眠顧客に対して、何もアクションを起こさないのが常識となっており、この休眠顧客の存在を前提とした収益構造となっているのです。
うかつに起こしてしまったら、解約されてしまうのですから、寝た子を起こすなと言うのが基本的な対応となっているのです。
しかし、サブスクリプションは、顧客との関係性を重視するサービスです。
顧客が休眠状態に入ってしまっては、関係性を構築するどころか、コミュニケーションをとることもできません。
ましてや、収益のために、寝かせたままにしておくと言うのは、顧客重視とは言えない対応です。
それにもかかわらず、多くのサブスクリプションサービスが収益を重視し、顧客にとって不利益となる状況を見過ごしているのです。
サブスクリプションは現在最も勢いのあるビジネスモデルであり、今後も市場の拡大化は続くと予想されています。
また、コロナ禍により、急速にデジタル化が進み、サブスクリプションの需要が増えています。
多くのサブスクリプションサービスは、このコロナ禍において新規の顧客を増加させているのです。
このような顧客を逃さないようにするためには、顧客接点を増やし、顧客との関係性を強化していくことが必要であり、それがサブスクリプションサービスの本質です。
新しく顧客を獲得することも必要ですが、既存の顧客維持するために、顧客が満足するサービスを提供することが最も重要なことなのです。
そして、そのためには、休眠状態を放置すると言う、顧客に不利益を与えるような状況を容認してはいけないのです。
この状況を重く見た企業が、このサブスクにおける悪しき常識に対し一石を投じたというニュースが先日流れました。
その内容は、動画配信サービス「Netfilix」が、長期間アカウントを利用していない顧客に対し、契約を継続するかどうかを確認すると言う対応を始めたと言うものです。
この対応によりNetfilixは多くの顧客を失う可能性が高くなります。
しかし、このような企業側の誠意のある対応は、当事者となる顧客だけでなく、他の多くの顧客や、Netfilixを利用したことの無いユーザーにも好印象を与えます。
サブスクリプションが本当に顧客を重要視するサービスであるならば、他の企業もこの対応に追随すべきなのです。
ある調査でも、解約や休止、契約の変更など、契約の内容を、顧客自身が望んだ時に簡単に変更できるようにしているサブスクリプションサービスは、他のサービスと比べ、解約率が5%程度低いと言う結果が出ています。
サブスクリプション事業を長く続くて行くためには、顧客のことを最重視し、顧客の不利益とならないようなサービスを提供していくことが大切なのです。
サブスクリプションが顧客との関係性を重視するサービスであるということは、広く知られていることです。
しかし、実際に、顧客重視のサービスが提供されているかと言うと、そうとも言い切れません。
その実例が、今回説明した休眠顧客の放置です。
料金を徴収しているにもかかわらず、明らかに利用していない顧客を放置しているサブスクリプションサービスが実際に多く存在しているのです。
これは、企業側が自身の収益のことのみを考え、顧客の不利益を考えていないということです。
この対応は結果として、顧客を失うことに繋がっていきます。そうならない前に、Netfilixのように誠意のある対応をすることが必要なのです。