サブスクビジネスは、従来のビジネスとは異なる点が多いと言われており、そのためにサブスク転換を図っても苦戦している企業が多く見受けられます。
そして、その両者の違いの中でも、特に注意しなければならないのが損益分岐点の違いです。
サブスクビジネスでは、従来のビジネスでは見られない損益分岐点の動きがあり、成功するためには、それを理解しておくことが必要なのです。
そこで今回の記事では、サブスクの成功を左右する損益分岐点について説明したいと思います。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
損益分岐点とは、管理会計において用いられる概念で、売上高と費用の2つの関係が等しくなることにより、損益が+でも-でもなく、ゼロとなる状態のことを指します。
この売上高とは、商品やサービスを販売することによって得られる利益であり、費用とは、それにかかるコストのことです。
当然のことですが、売上高がそのまま利益となることはありません。
商品やサービスを販売するためには、原価や人件費など様々な費用がかかり、これらの費用を売上高から差し引いたものが実際の利益となるのです。
この費用が売上高を超えてしまえば、当然利益は発生しませんので赤字となります。
しかし、この費用を売上高でカバーすることができれば、損益がゼロとなりますから、それ以降は利益となり、そのラインが損益分岐点なのです。
どのようなビジネスであっても、経営をする上で、利益を出すためにはどれくらい販売すれば良いのか、その明確な数値目標を持つことが重要となります。
従って、どのビジネスにおいても損益分岐点は重要な指標となるのです。
これは、サブスクビジネスにおいても同様ですが、サブスクビジネスの損益分岐点の動きは、従来のビジネスとは異なるのです。
そのため、従来のビジネスからサブスクビジネスへ転換を図る場合には、この違いを正しく理解しておく必要があります。
まず、従来のビジネスとサブスクビジネスの大きな違いとして理解しておくべきであるのが、ゴールをどこに設定しているかと言うことです。
従来のビジネスでは、商品やサービスを販売してしまえば、そこで取引は終了となっていました。
つまり、商品やサービスを消費者に販売する一度の取引がゴールとなるのです。
一方サブスクビジネスでは、サービスを契約してもらうと言う取引はあくまでもスタートとなります。
そこから、できる限り長く継続して利用してもらうことが目的であり、それがゴールなのです。
このことから、従来のビジネスの場合、商品やサービスを開発してしまえば、そこにそれ以上コストはかからず、後はマーケティングにかかるコストとなります。
しかし、サブスクビジネスは、そこからがスタートであるため、商品やサービスを改善し続ける必要があり、それに伴い、損益分岐点が従来よりも高くなるのです。
サブスクビジネスの損益分岐点は、上記のような理由により従来よりも高くなる傾向がありますが、さらにサブスクには、従来とは異なる損益分岐点の動きがあるのです。
先ほども述べたように、サブスクビジネスでは、サービスの契約と言う取引はスタートとなります。
従来では、そこがゴールであり、そこで利益を上げることが可能でしたが、サブスクの場合、利益を上げるためには、そこから継続してサービスを利用してもらう必要があるのです。
しかし、サブスクビジネスの場合でも、サービスの開始時には、新規顧客の獲得のための営業費や広告費と言ったコストがかかります。
そのため、継続して利用してもらうことができなければそのコストを回収することができず、赤字となってしまうのです。
つまり、サブスクビジネスでは、サービスの開始時には、ほとんどの場合赤字の期間が生じてしまい、損益分岐点に到達することができない状態が続くのです。
また、資金に余裕のある大手企業が提供するサブスクサービスの場合、サービス開始時に無料お試し期間を設けているケースが多々あります。
これは当然、赤字を覚悟してのことではありますが、このようなケースでは利益が発生するようになるまでにさらに時間がかかることとなり、それに伴い、損益分岐点も右に移動するのです。
さらに、無料の期間を設けることで顧客単価が下がると言うリスクもあるのです。
このように、サブスクビジネスは、サービス開始当初は、損益分岐点に達することができず、赤字になるケースがほとんどです。
サブスクビジネスへの転換を図る場合には、この点を理解し、利益がだせるようになるまでの期間を持ちこたえることのできる資金面での余裕が必要となります。
しかし、サブスクビジネスは、これを乗り越え、顧客の数が安定してしまえば、従来よりも高い利益を上げることも可能となるのです。
そして、そのためには、サブスクにける損益分岐点の動きをしっかりと理解することが大切なのです。