近年、D2Cと言うビジネスモデルが注目を集め、現在ではあらゆる業界からD2Cブランドが立ち上げられています。
その中でも、特にD2Cに対する注目度が高いのがアパレル業界です。
その背景には、アパレル業界にとって、このD2Cの仕組みが革新的であることがありますが、大きな要因は、アパレル業界全体がかつてない程低迷した状態であるからなのです。
そこで今回の記事では、アパレル業界とD2Cについて説明したいと思います。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
近年アパレル業界は、市場全体の業績が低迷し、苦戦が続いていました。
そこに新型コロナの流行による外出の自粛と言うかつてない事態が訪れ、追い打ちをかけられるような形で、現在のアパレル業界は未曽有の危機的状況に陥っています。
さらに、このコロナ禍に終息の兆しが見えてこないことで、今後、倒産するアパレル企業が増加していくのではないかとも言われています。
このアパレル業界の問題は、この状況となる、はるか以前から指摘されていました。
アパレル業界は、基本的に原価率を下げて商品を大量に生産し、大量に流通させ、残った在庫はセールによって価格を大幅に値下げして売りさばくと言う仕組みとなっています。
しかし、近年では、消費者はそのような大量生産された商品に関心を持たなくなっています。
その背景には、消費者のニーズが多様化していることがありますが、最も大きな要因は、既に市場には商品が溢れていると言うことなのです。
多くのアパレル企業が、似たような商品を大量に生産し販売するため、同じような商品ばかりが市場には溢れているのです。
そして、この市場と言うのは、主に実店舗のことを指しており、つまり、アパレル業界は商品が多すぎ、それを販売する実店舗が多すぎるのです。
この状況に、多くの消費者は疲弊し、商品を購入することが少なくなっているのです。
日本は、世界的に見ても小売業界が著しく発展しており、アパレル業界に限らず、様々な店舗が国内の至るところに存在しています。
これは、都市部だけに限った話ではありません。
地方都市においても、コンビニやドラッグストア、スーパーなどが数多く立ち並び、郊外にはショッピングモールやアウトレットモール、ホームセンターが出店するなど、あらゆる場所に、あらゆる店舗が存在しています。
さらに、これに加え飲食店の店舗も多く存在しているのです。程実店舗の多い国は、他には見られません。
日本は過剰とも言えるほど実店舗の多い国なのです。
これは、消費者からすると、利便性という点で優れているように思われますが、実店舗が多いために、日本はほかの国よりもEC化が遅れてしまっているのです。
このEC化の遅れは、特にアパレル業界で顕著となっていました。
商品を試着することが一般的であるアパレル業界は、実店舗を主軸としており、なかなかEC化へシフトすることができずにいたのです。
しかし、コロナ禍によって実店舗の客足がかつてないほどに激減してしまいます。そして、これを受けて、やっとEC化に踏み切るアパレルが増加したのです。
しかし、そもそも商品が売れなくなっていたところへ、急にEC化を加速させ、実店舗からからECへシフトをしても、商品が売れるようになるわけではありません。
これは、単に実店舗で売り上げを上げることができないがためのEC化であるに過ぎませんし、同じ商品の販売する場所を変えたに過ぎないのです。
問題となるのは、前述のように、原価率を下げて商品を大量に生産し、大量に流通させ、残った在庫はセールによって価格を大幅に値下げして売りさばくと言うアパレル業界の仕組みなのです。
この仕組みを変えずにEC化を行ったところで、何の解決にもならないのです。
このような危機的状況にあるアパレル業界において、高い注目を集めたのが、D2Cと言うビジネスモデルです。
このD2Cは、コロナ禍以前からアパレル業界を中心に普及し始めたモデルで、基本的には、商品の企画から販売までを内製し、自社ECで消費者に直接販売する仕組みになっています。
このモデルがアパレル業界で注目されたのは、前述のようなアパレル業界の仕組みと全く異なる特徴を持っているからです。
余分な店舗は持たず、自社で生産した良質な商品だけを、ECで直接消費者に販売するD2Cは、不況にあえぐアパレル業界において革新的とされたのです。
実際に、海外ではスタートアップ企業だけでなく大企業までもが、このビジネスモデルへの転換を図っています。
国内においても、多くのアパレルD2Cブランドが誕生し、その存在感を示しているのです。
そして、国内のアパレル大手もこのビジネスモデルでの起死回生を狙っています。
しかし、このD2Cのターゲットとなるのは、デジタル化の加速についていける若い世代です。
それ以上の世代は、過剰な実店舗の便利さに慣れすぎており、このような極端な変化にはついていくことが困難です。
日本は少子高齢化が急速に進んでいる国であり、社会のシステムも高齢化に合わせる傾向が強いのです。
D2Cがいくら話題となっても、消費の中心となるのは、若い世代だけです。
コロナ禍において、一時的にECの利用者が増えてはいますが、コロナが収束した際には、ECに不慣れな世代は利便性の高い実店舗に戻る可能性が高いのです。
危機的状況にあるアパレル業界がD2Cで起死回生を図るためには、若い世代だけでなく、これらの世代をも取り込むことが必要であり、世代を超えて支持を獲得することが重要になるのです。
アパレル商品が売れなくなり、アパレル業界が危ないと言うことは、かなり以前から指摘されていたことです。
しかし、それにも関わらず、長い間改革をする姿勢が示されることはありませんでした。
それが、新型コロナウイルスの流行が追い打ちとなり、悪く言えば瀕死の状況と言っても良いような状況となってしまったのです。
そして、そのアパレル業界がこの状況を変えるために、注目しているのがD2Cであり、実際にアパレルの大手企業もこぞってD2Cへの高い関心を示しています。
しかし、D2Cへの転換を図ったからと言って、それが成功するかどうかは分かりません。
アパレル業界が苦境に立たされているのには様々な要因があり、ビジネスモデルを変えただけで解決できるような簡単な問題ではないのです。