D2Cビジネスで覚えておくべき消費者契約法の不当条項規制

メーカーやブランドが自社商品をECサイトなどで直接顧客に販売する、D2Cというビジネスモデルが今、多くの注目を集めています。

D2Cビジネスは、仲介業者を介していませんので、商品の企画や開発、製造、販売までのすべての工程を、自社内で一貫して行うことが特徴です。

特にEC化が増加傾向にある現代は、自社とEC、実店舗の3つの販売チャネルを活用する企業が多くなる中で、自然にD2Cの市場規模も拡大することが想定されているのです。

D2Cビジネスを行う上では、さまざまな関連法規を遵守する必要がありますので、しっかり理解しておかなければなりません。

近年は特に、民法や薬機法の改正により、コンプライアンス整備の重要性は高まってきていますので、等方的なポイントを守り、リスクを防ぎながら進めていかなければなりません。

そこで今回は、D2Cビジネスで覚えておくべき消費者契約法の不当条項規制について、詳しくお話させていただきたいと思います。

今後D2C市場への参入を検討されている方は、ぜひこの記事を最後までお読みになって、今後の参考になさってくださいね。

なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。

消費者契約法の不当条項規制

・消費者契約法

民法は、さまざまなECビジネスモデルをカバーするための取引一般法であったことに対し、消費者契約法は、民法の特別法として、民事裁判で争う際の判断基準になります。

今現在は、消費者庁が所管しているのですが、特定商取引法や景品表示法のように、違反すれば行政処分というわけではありません。

ECビジネスのような少額の取引の場合は、多くの場合はもし、トラブルになったとしても裁判まで行くことはないのですが、消費者センターや、法律知識のある消費者の場合は、消費者契約法を主張する場合がありますので、D2C事業者としても覚えておかなければなりません。

消費者契約法のルールは、不当勧誘による契約は取り消し可能であること、不当な契約条項は無効というものです。

本来であれば、Eコマースの商品広告は、勧誘とは考えられていなかったのですが、2017年より紙のチラシが勧誘に当たると解釈されるようになったため、広告表示については行政処分に加え、取り消しのリスクがないと考えなければなりません。

・消費者権利を一方的に害する条項は無効になる

消費者契約法第10条では、「消費者の権利を制限し又は消費者の業務を加重する条項」であり、一定の要件を満たすものは無効と定めています。

消費者契約法は、個々の契約条件に関しても定型約款に当たらないということも対象になっており、大前提として事業者と消費者は、情報量や交渉力に大きな差がありますので、その差を無くすためにも、事業者側に責任が重く課せられるようになっているのです。

消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する例としては、消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項を挙げています。

信義則に反するなど、他の条件などもすべて満たし、消費者の権利を一方的に害すると判断された時に無効になるのです。

・事業者の損害賠償責任を免除する条項は無効

具体的な不当条項として、第8条に「事業者の損害賠償責任を免除する条項」というものがあります。

簡単に言うと、事業者の債務不履行や不法行為により消費者に損害を与えてしまったとしても、事業者は一切の責任を負わないこと、そして事業者の故意や重大な過失が消費者の損害の原因になったとしても損害賠償が発生しない、という内容が不当することです。

たとえばもし、商品に不備のある不良品の場合でも修理や交換対応をしない、という条項は無効になる可能性が高いでしょう。

修理はできないが代替品を送るという対応や、不良品の返品交換対応の問い合わせは商品受取後〇日以内であれば対応する、という条項であれば該当するのですが、事業者側に原因があり、この期間も極端に短い場合は、「消費者の権利を不当に制限する」ということに該当することがあります。


消費者都合の返品の場合はまた違う扱いになりますので、混同しないように注意してください。

・消費者の解除権を放棄させる条項は無効

2016年の改正にて、契約成立後のキャンセルは一切受け付けない、という条項は無効になり、2018年の改正には、契約成立後のキャンセル時、消費者に解除権があるか、ということは事業者による判断である、という条項も無効になりました。

事業者のミスや商品の不備などの場合は消費者契約解除の権利が発生しますが、これを放棄させるのは不当であるという趣旨であり、あくまでも契約成立後であることを覚えておきましょう。

まとめ

以上、D2Cビジネスで覚えておくべき消費者契約法の不当条項規約についてお話させていただきました。

D2Cビジネスをはじめ、ECサービスでは国内大手利用規約を念頭に、不当条項規制をより厳しくなっていますので、今後もさらに改正が続いていくでしょう。

改正動向や差止請求の状況によく注意をして、自社の利用規約やその他契約条件には、不当と思われる可能性のある部分はないのか、ぜひこの機会に見直してみてくださいね。