D2Cは、アメリカで誕生し、日本国内においても話題を集めているビジネスモデルです。
実際に、日本国内でもブランドを展開し、消費者から高い支持を得ている企業も存在しています。
このビジネスモデルがこれほど話題となるのは、基本的な考え方がこれまでのビジネスと大きく異なるからです。
そこで今回の記事では、D2Cの今後について説明したいと思います。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
D2Cは、一般的には、企業やメーカーが消費者に商品を直接販売するビジネスモデルとして知られています。
しかし、この考え方のビジネスは以前から存在しており、特に目新しいものではありません。
D2Cが新しいビジネスと言われるのは、すべてを自社で一貫して行い、そして、デジタルで全てが完結すると言うことです。
つまり、SNSを軸としてマーケティングを展開し、自社ECで販売を行うのが、D2Cブランドと呼ばれるのです。
このD2Cは、そもそもアメリカで誕生したものです。
卸業者や小売店などの仲介業者を介さずに、消費者に直接商品を販売することにより、高品質の商品を低価格で販売できるようになり、消費者の高い支持を得ることに成功しました。
そのアメリカにおける代表的なD2Cブランドは、創業後急激に成長し、瞬く間にユニコーン企業と呼ばれる、評価額10億ドル以上の企業へと変貌しています。
アメリカでは、このような大規模なD2Cブランドが数多く存在しています。
そしてこれらのD2Cブランドは、自社ECを軸として事業を展開し、実店舗の運営にかかるコストを大幅に削減、それを商品に還元することで商品の価格を抑えています。
また、購買履歴や閲覧履歴など全ての顧客データを自社で管理することも可能となったため、それをマーケティング活動に最大限に活用しているのです。
このように、D2Cでは成功事例ばかりが聞かれ、メリットばかりが強調されています。
しかし、前述のようなユニコーン企業に成長するのは、ほんのわずかであり、失敗事例のほうが数多くあるのです。
アメリカで成功しているケースは、サプライチェーンを最適化し、質の良い商品を、従来よりも安価で提供することで、消費者の高い支持を得ています。
ただし、この仕組みをそのまま日本で真似すると言うのは困難です。
アメリカと日本では、小売の在り方が全く異なります。
日本では、至る所にコンビニやドラッグストアなどが存在し、大規模なモールやスーパーなども身近な場所に存在します。
これは、地方であっても同様であり、車を利用すれば容易に利用することができるのです。
つまり、日本は小売りにおいて非常に利便性の高い国であるのです。
一方のアメリカは、国土も広く、それほどの利便性はありません。
また、日本はそもそも商品の質が高い国でもあります。
伝統工芸品などが多くあるように、ものつくりにおいて非常に優秀なのです。
手ごろな価格で、品質の良い商品を購入することも可能ですし、こだわって作られた高品質の商品も支持されるのです。
そのため、日本におけるD2Cでは、アメリカのように、品質の良い商品を低価格で提供することでは、多くの消費者の支持を得ることができません。
そのような商品は、従来から市場にあふれるように存在し、容易に入手することができるのです。
日本でのD2Cでは、高単価であっても、その価値のある高品質な商品が支持されるのです。
実際に、日本で展開されているD2Cブランドの多くは、品質にこだわった高単価の商品をを展開しています。
具体的な例では、オーダーメイドスーツを提供しているD2Cブランドは、デジタルを活用することにより、高品質なスーツを適正な価格で販売しています。
これは、高単価ではありますが、従来のオーダーメイドスーツと比較すると低価格であり、それでいて、従来と同様に高品質なものを提供しているのです。
また、ヘアケア商品を取り扱うD2Cブランドでは、美容院で取り扱うレベルの高品質な商品を、適正な価格で提供しています。
このブランドは、顧客一人一人の診断結果を基に、商品の成分配合を変え、その人にあったオリジナル商品を提供しています。
髪と言うのは、人それぞれ髪質が異なり、悩みもそれぞれ異なります。
このブランドでは、その悩みを解消する商品を提供し、尚且つ、顧客からのフィードバックを基に、1月ごとに商品の成分配合を変更しているのです。
顧客の髪質に合わせたオリジナル商品となりますので、価格も一般的なヘアケア商品よりは高額となりますが、美容院などで購入するよりも安価であり、品質も劣ることはありません。
この事例の両者とも高額な商品を取り扱っていますが、これらの商品は、従来であれば、さらに高価格となる高品質な商品です。
これをD2Cで扱うことにより、比較的低価格な適正価格で提供しているのです。
これが、この両者が高い支持を得ることができている理由の一つではありますが、支持の理由はそれだけではありません。
両者とも、ブランドの世界観やストーリーをSNSや自社ECなどを活用することで顧客に発信し、その商品やブランドの価値を高めることに成功しているのです。
そして、そのブランディングは従来のように一方的な発信ではありません。
ブランドに対し共感を持つ顧客と積極的にコミュニケーションをとり、顧客からのフィードバックに素早く対応するなど、顧客の意見を商品やサービスに素早く反映し、顧客とともにブランドの価値を高めているのです。
これにより、顧客はこのブランドに強いロイヤリティを持ち、企業は顧客をファン化することに成功しているのです。
日本で展開しているD2Cブランドの多くが、上記のように、顧客にとって価値のある高品質な商品を適正な価格で販売しています。
そして、顧客との接点を持つことで、顧客とともにその価値を高めているのです。
現代は、ECで買い物をすることに抵抗がなくなってきています。
ECであれば、店舗に足を運ぶ必要もなく、便利に買い物ができ、商品も豊富にそろっているからです。
しかし、多くの消費者は、ECでただ商品を購入しているだけであり、楽しんで買い物をしていると言うわけではないのです。
消費者の多くは、利便性よりも、付加価値のある体験を求めています。そして、それにこたえることができるのがD2Cなのです。