昨今、小売市場では、D2Cというビジネスモデルが話題を集め、様々なブランドが誕生しています。
その中で、注目を集めているのが、健康食品を取り扱うD2Cブランドです。
そもそも健康食品はECでの人気が高く、市場には多くの競合がひしめいています。
大手の企業が圧倒的なシェアを持っているため、小規模な企業はしのぎを削っているような状況となっていますが、そのような状況の中でも、健康食品D2Cブランドは増えてきているのです。
しかし、競合が多い市場において勝ち抜くためには、既存の健康食品ECとの差別化が必要となります。
そして、その差別化に重要となるキーワードが機能性なのです。
そこで今回の記事では、D2Cで機能性の訴求が必要ではない理由について説明したいと思います。
なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。
D2Cは、商品の企画から製造、広告宣伝、販売に至るまで、すべての工程を自社で内製する仕組みのビジネスモデルです。
このビジネスモデルは、広告宣伝にはSNSを活用し、販売は自社ECで行うのが基本であり、デジタルを最大限に活用するというのが大きな特徴です。
このD2Cがこれほど注目されるのは、従来のブランドビジネスとは異なり、ブランドの世界観を徹底して追求することを重視しているからです。
すべての工程を自社で内製し、中間業者を介さないため、このブランドの世界観を追求することが可能となるのです。
そして、SNSや自社ECなどのデジタルを最大限に活用して、この世界観を消費者に幅広く発信していくのです。
このD2Cは、アパレル業界を中心に成長してきましたが、最近ではアパレル以外のD2Cブランドも増加してきています。
その中でも注目されているのが、健康食品のD2Cブランドです。
健康食品は、もともとECでも人気の商材として知られていますが、D2Cにおいても人気を集めています。
健康食品は、直接口から体内に摂取する食品であり、他の商材よりも高い安全性が求められます。
そのため、健康食品業界では名の知れた企業の商品が売り上げの上位を占めています。
安全性を求める消費者は、名前の知らない企業の商品よりも、名が知れた企業の商品を信頼する傾向が高いのです。
しかし、名が知れた企業であるからと言って、何もせずに商品が売れるわけではありません。
大々的な広告を打って安全であること、健康に役立つことを強調しているのです。
大企業だけでなく、健康食品を扱うECでは、安全性や健康に役立つ機能性を強く訴求し、消費者を取り込もうとしています。
ただし、現在は広告の規制が年々厳しくなっており、機能性があることを大げさに表現することができなくなっています。
例えば、ダイエット効果の期待できる食品であっても、「たべるだけで誰でも痩せることができます」などと誇張した表現を使用してはいけないのです。
そのため、各健康食品ECでは、規制にかからない表現で機能性を謳っています。
そして、機能性を謳うこれらの商品は、国への届け出が必要であったり、届け出が不要であっても、商品の内容や表示に厳しいルールがあり、それを守らなければいけません。
この国への届け出は、ただ商品の発売を届けるというだけではありません。
国から認められるためには、膨大な資料を作成し、提出する必要があり、また、申請にも手間や時間がかかるのです。
健康食品は、安全性が大切ですから、厳しいルールがあるのは仕方のないことであり、これがあるからこそ、消費者は安心して健康食品を購入してくれるのです。
そして、健康食品ECは、この国から認可された機能性を印籠のように利用することで、消費者を取り込んでいるのです。
しかし、D2Cにおいて健康食品を取り扱う場合、機能性を謳うためにこれらの手間を欠ける必要はありません。
消費者に機能性を訴求する必要がないのです。
その理由は、D2Cでは機能性を訴求しなくても、消費者を取り込むことが可能であるからです。
D2Cは、ブランド世界観を構築し、それをSNSや自社ECなどのデジタルを通じて消費者に伝えていくことにより、ブランドの価値を高めていくビジネスです。
従来のビジネスにおいて、健康食品を売るためには、広告などで、広く機能性を訴求していく必要があります。
制限のある中で言葉を集約して伝えるためには、機能性を謳い文句とする必要があるわけです。
一方、D2Cが商品やブランドについて消費者に伝えるのは、SNSや自社ECなどのデジタルを活用するのですから、制限はありません。
デジタルを通じて、いくらでも消費者に向けて発信することが可能であり、大々的な広告や宣伝を行わなくても、必要なことを伝えることができるのです。
健康食品の広告や宣伝では、必ずと言って良いほど、機能性が謳われています。
限られた中で、消費者に商品の情報を伝えるためには、それが必要なことだとされているのです。
しかし、D2Cは、従来のビジネスとは異なり、広告や宣伝にデジタルを活用するビジネスです。
商品の情報を伝えるのに制限はないのです。
また、D2Cは、商品そのものよりもブランドの世界観を伝えることを重要と考えるビジネスでもあります。
これらの、従来とは異なるビジネスの特徴により、機能性を強調しなくても、健康食品という商材を売ることができるのです。