D2Cブランドが実店舗進出するのはなぜか?

D2Cは、商品の企画、製造から、販売に至るまで全ての工程を、自社で一貫して行うビジネスモデルです。

基本的に販売は自社ECのみで行い、実店舗は構えないのが特徴です。

しかし、現在多くのD2Cブランドが、この基本からはみ出し、実店舗の運営に乗り出しています。

そこで今回の記事では、なぜD2Cブランドは実店舗進出するのかについて説明したいと思います。

なお、単品リピート通販についての基礎知識等はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ読んでみて下さい。

D2Cの特徴

D2Cとは、中間業者を介さずに、自社で商品の企画から販売を行うビジネスモデルです。

販売は自社ECのみで行い、情報の発信やマーケティングに至るまで全てをデジタルで完結するのが一般的です。

実店舗を運営するケースもありますが、その場合の店舗は、展示場としての役割であり、販売は基本的には行われません。

卸売業者や小売店、広告代理店、流通業者などの中間業者を一切挟まず、店舗運営コストもかからないため、その分製品価格を抑えることが可能となります。

マーケティングにおいても、自社EC、SNS、ブログなどを駆使し、情報をダイレクトに顧客に届け、顧客との関係性を構築することができます。

また、商品の企画段階から、一貫したマーケティングができるため、ブランドの世界観を棄損することなく、ブランドの価値を高めることが可能です。

このようにD2Cは、従来のビジネスでは、コストがかさんでいた業務をすべて自社で行い、デジタルを活用することにより、低コストで立ち上げることが可能となるのです。

日本国内においても多くの企業が参入しており、特に多いのがアパレル分野ですが、他にも、インテリアや雑貨、日用品、食料品などあらゆる業種からD2Cブランドが誕生しています。

このD2Cの主な顧客層は20代から30代の比較的若い世代です。

この世代は、ミレニアル世代と呼ばれ、デジタルに親和性が高く、SNSの利用率が高いため、デジタルを活用するD2Cとの相性が良いと言われています。

そもそもEC利用率も高く、ECを利用することに抵抗がない世代でもあり、試着が必要なアパレル商品であっても、SNSの画像やYouTubeの動画などを見ただけで購入を決断することができるのです。

また、この世代は、有名ブランドに対する関心が薄く、無名のブランドであっても自身が気に入れば購入すると言う特徴があり、その点においてもD2Cと相性が良いのです。

なぜD2Cブランドは実店舗の運営に乗り出すのか?

上記のように、D2Cは自社ECとWEBマーケティングを主軸として、顧客を取り込んできましたが、最近になって、この状況に変化が見え始めています。

店舗運営にかかるコストを削減するために、自社ECのみで販売を行っていたD2Cブランドの多くが、実店舗の運営に乗り出しているのです。

これは、D2Cブランドが増加し、競争が激化してきていることに加えて、SNSの広告費が高騰していることが影響していると言われています。

店舗運営にコストがかかったとしても、競合との明確な差別化を行い、新たな顧客を開拓しなくてはならないような状況になっているのです。

この状況は、D2C先進国であるアメリカでは、一足早くみられていた現象です。

アメリカのD2Cブランドの代表的な存在である、眼鏡ブランドWarbyParkerは、手ごろな価格で高品質の眼鏡を提供し、SNSにおいて高い支持を得ることに成功し、10億ドル以上の企業価値を持つユニコーン企業に成長したブランドです。

このWarbyParkerも自社ECの販売のみでスタートしましたが、従来は必ず試着を行う眼鏡をオンラインで購入することに抵抗を感じるユーザーが多いことを考慮し、それらのユーザを取り込むために実店舗の展開を始めています。

ただし、WarbyParkerの店舗は、あくまでもショールーム的な役割であり、実際に商品を確認し、試着を行った後は、オンラインで購入をしてもらうと言う仕組みになっています。

また、靴のD2CブランドAllbirdsは、靴の履き心地の良さを徹底的に追求したブランドであり、その心地よさを実際に体感してもらうために、実店舗の運営を開始しています。

D2Cブランドが増加しているアメリカだけではなく、海外のユーザーも取り込むために中国や日本にも出店しています。

日本のD2Cブランドの多くも、アメリカと同様に実店舗の運営に乗り出しています。

国内のD2Cブランドの代表的な事例として、良く名前が挙がるチョコレートブランドMinimalは、自社ECだけでなく、実店舗を運営することにより、顧客と直接コミュニケーションをとることに注力しています。

これにより、ECでは聞くことのできない、実際の顧客の声を聞くことが可能となり、それを商品開発やマーケティングの改善に役立ているのです。

この事例の参考にすべき点は、実店舗とECを使い分け、それぞれの利点を活かしているところです。

ECの足りないところを、実店舗で補うことにより、最大限の効果を引き出すことに成功しているのです。

このようなことから考えると、D2Cブランドの実店舗進出と言うのは、従来の販売方法に戻っているということではなく、販売方法が進化していると考えられます。

つまり、D2Cブランドの多くが実店舗の運営に乗り出すのは、実店舗で顧客に商品を試してもらい、ECでの販売を手助けし、実店舗で得た商品やブランドに関するダイレクトな意見をフィードバックし、マーケティングの改善に役立てると言うように、どちらかの販売方法にこだわるのではなく、どちらの利点も活かし、効果を最大限にすることが可能となるからなのです。

まとめ

D2Cは、実店舗運営にかかるコストを削減するため、実店舗を構えないのが一般的でした。

しかし、現在はD2Cブランドの数が大幅に増加し、何らかの差別化を図らなければ生き残りが難しいような状況になっているのです。

そこで、多くのD2Cブランドが実店舗の運営に乗り出し、新たな顧客層の獲得に注力しています。

実際に、オンラインでの購入に抵抗のあるユーザーは多いですし、商品を実際に見たいと考えるユーザーは多く存在しています。

実店舗を運営することにより、自社ECだけでは取りこぼしてしまっていた、これらのユーザーを取り込むことが可能となるのです。

D2Cが実店舗運営に乗り出しているのは、このように実店舗の利点を生かし、効果を最大限にするためであり、今後もこの流れは続いていくものと考えられます。